研究課題
ナノ領域に電子を閉じ込める半導体ナノワイヤ(NWs)に、電子のスピン制御を可能とする強磁性体を融合した、これまでに無い1次元強磁性体/半導体複合NWsを提案し、そのビルドアップ型結晶成長手法の確立を目的とする。本年度は、キーとなる縦型強磁性体/半導体ヘテロ接合ナノ構造として、GaAs(111)B半導体基板上へのMnAs/Al(Ga)Asヘテロ接合の選択形成技術の確立、結晶構造分析、物性評価等に関する研究を実施した。(1)AlGaAsナノクラスタ(NCs)をバッファ層として利用することにより、意図しないGaAs層の堆積により生じた均一性低下を抑制できる。AlGaAs NCsの形成条件を最適化することにより、高均一なMnAs/AlGaAs NCs(直径〜140mm)の形成が可能となった。(2)結晶磁気異方性と共に形状磁気異方性を有する異方性MnAs NCsを作製し、磁気力顕微鏡による磁区構造評価を行った。これにより、等方性NCsと比べて、単磁区化するNCsの磁化方向の制御性向上を可能にした。(3)MnAs/AlAs/MnAsヘテロ接合構造の作製条件の最適化を行った。原子レベルで平坦なMnAsのc面上では、半導体薄膜の成長自体が困難であったが、表面拡散長が比較的短いAlAs薄膜を非磁性中間層として用い、その成長条件を最適化することにより縦型ヘテロ接合NCsを作製した。(4)量子井戸(ドット)層材料であるGahAs NWsの固相組成を顕微発光測定により評価し、量子構造を内包するNWs形成の指針を得た。マスク開口部のピッチ(周期)が狭い程、NWs中のIn原子の取り込み量が増加する依存性を明らかにし、マスク設計による量子構造設計・制御が可能となった。(5)海外研究協力者と磁気物性評価の面で連携し、強磁性共鳴測定等によってMmAs NCsの明瞭な磁気異方性を確認した。
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