研究概要 |
ハードディスク等をはじめとする次世代の超高密度磁気記録媒体の実現には, ナノ磁性体のダイナミクス挙動の解明が不可欠である. そのため, 本研究では単一ナノ磁性粒子の超高速ならびに高感度なリアルタイム磁気計測技術の開発および, 超高遠かつ低磁場反転技術の開発を行うことを目的として研究を行った.昨年度までに, 先端微細加工技術と我々が独自開発した高圧パルス発生器を巧みに組み合わせることにより, 立上り時間0.4ナノ秒以下かつ磁場振幅が数kOeにも達する大振幅高速パルス磁場印加システムならびに単一磁性粒子の残留磁化状態の超高感度逐次計測システムの構築を行い, それを用いて垂直磁気異方性を有するCo/Pt多層膜の単一ナノ磁性粒子を用いた磁化反転実験を進めてきた.本年度では, このシステムを用いて, ナノ秒オーダーのパルス磁場によるスイッチング実験を様々なパルス条件下で行った. まず, 大振幅ナノ秒パルスのみによる完全なスイッチングが行えることを確認し, 更にパルス幅を変化させることにより, ナノ磁性体におけるスイッチング過程がナノ秒スケールで変化することを明らかにした. その後の詳細な解析により, スイッチング時における初期核形成とその後に続く磁壁伝搬の過程が異なる時間スケールで進行していることを実験的に明らかにした.本成果は将来の超高密度磁気記録だけでなく, スピントロニクス素子などにおける高速スイッチングの基礎となる重要な結果と判断している。
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