研究概要 |
長距離通信や光配線等に必要な,半導体レーザの高速動作や高効率化のため,レーザ活性層にキャリアエネルギーフィルタリングを可能とする共鳴トンネル量子障壁構造を導入して,キャリアのエネルギー分布の緩和特性を制御するレーザの実現を目的としている. 平成19年度は,1)トンネル構造とレーザ特性の関係性の理論解析として,キャリア分布の時間依存性の数値解析に,各エネルギーごとのキャリア状態数が光学フォノンおよびキャリア間の散乱により異なる状態に遷移するモデルを構築した.解析として,時間変化を逐次計算することにより,構造を適切に選択した場合に,高速なエネルギー分布の緩和が可能となり,高速直接変調動作の可能性を示した.また,これまでに試行製作したレーザの発振特性に見られた,大きな光出力の減少を説明する理論モデルの検討を進め,トンネル層に蓄積したキャリアの波動関数のしみだしが影響するモデルを提案した.2)結晶成長における高品質量子構造形成として,分子ビーム成長法を用いたGaAs基板上のAlGaAs/GalnAsの構造形成の検討を進め,隣接するAlGaAsとGalnAsの結晶成長条件の違いをある程度克服する成長手順を開拓し,デバイス製作を可能とした.3)レーザ試作による基礎特性の把握として,2)の成長手順を元に1)の光出力の減少を説明するモデルに基づき,より大きな出力減少を可能とする構造および1分子層単位の厚さの特性への影響を実験的に確認した.これらの結果より,優れた特性のデバイス実現への指針を得た.
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