近年の地球温暖化などの影響で観測事例に無い集中豪雨などの被害が後を絶たない。巨大構造物、例えば、石油コンビナート、トンネル、高層ビル、等は老朽化や地震などで崩落する危険性がある。それ故、これらの巨大構造物の極僅かな歪みを常時モニターしておくことが望まれている。現在、FBG光ファイバーを用いたセンシング技術が研究されているが、一方で、更に高感度な光ファイバーに、更に高機能な特性を持たせようとする試みもある。本提案では、高性能フォトニック光ファイバーの開発及び、フォトニック光ファイバーを用いた高感度センサーの製作を目指して研究を行った。 本年度は、まずフォトニック光ファイバー製作装置を設計製作した。従来のFBG光ファイバーの場合に比べて、除振動能力に優れた(固有振動数、垂直1.2Hz、水平1.0Hz)光学実験台の上に、製作装置を製作した。そしてコヒーレント長が通常よりも2桁長い固体レーザーを書き込み用レーザーとして採用した。書き込み実験を行ったところ、所定の能力を得る事ができた。 フォトニック光ファイバー製作装置の設計製作と平行して、フォトニック光ファイバー内の光伝搬の様子をシュミレーションした。フォトニック光ファイバー中を伝搬する光は、そのフォトニック光ファイバーを構成している材料の屈折率や構造に大きく依存する。それ故、時間差領域差分近似(FDTD)法を用いて光の伝搬をシュミレーションした。最終目的は、超音波計測を行うために最適な構造を見つけることであり、今年度も引き続いて計算を行う予定である。 更に、フォトニックファイバーを作製するための材料となる光ファイバー素線の探索も行った。現在、水素ドープした光ファイバーとボロンドープした光ファイバーの2つが有力であることがわかった。
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