巨大構造物、例えば、石油コンビナート、トンネル、高層ビル、等は老朽化や地震などで崩落する危険性がある。それ故、これらの巨大構造物の極僅かな歪みを常時モニターしておくことが望まれている。また近年、自動車や航空機などを使用中常時モニターして破壊を事前に探知する研究(スマートセンシング技術)が進められている。現在、ファイバーブラックグレーティング(FBG)やマルチコアファイバーなどの各種光ファイバーを用いたセンシング技術が研究されているが、一方で、更に高機能な特性を持たせようとする試みもある。本提案では、高性能フォトニック結晶ファイバーの開発を目指して研究を行った。 本年度は、振動計測やアコースチィックエミッション(AE)検出に最適なフォトニック結晶ファイバーの構造を検討した。その結果、光ファイバーコアのまわりに数個のホールが配置されているフォトニック結晶ファイバーに、長周期構造(LPG)を作製する事が望ましいことを見出した。検討結果を考慮したうえで、水素ドープしたゲルマニウムーボロン(Ge-B)をドープした光ファイバーにLPGの製作を行った。紫外線レーザーを180分間照射することにより、実際に1550nm近傍に半値幅10nmで10dB程度の吸収ピークを作製する事ができた。 LPG及びFBGを用いて、振動計測を行った。空気中を伝搬する振動を計測したところ1から2nm程度のピークの変化が観測できた。今後、高層ビル等の材料であるコンクリートや航空機の材料である金属や強化プラスチックを用いて振動計測を行う予定である。
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