研究概要 |
本研究は, 合理的な建物の地震応答制御として, 制震デバイスであるダンパーと建物の架構を繋ぐダンパー支持部材の負担軽減と, 建物高さ方向の応答分布の均一化を図ることを目標とした。平成20年度は,前年度に検討した等価線形化法を用いた制御システムの性能曲線の実験的な検証を行い, その妥当性を確認した。さらにこの結果を踏まえ, 本制御則を用いたセミアクティブ制振建物の簡便な設計手法の提案を行った。本研究で検討するセミアクティブ制御則の場合は, 地震時の建物のエネルギー応答量に乗ずる制御係数が制御効果に大きく影響することが前年度までの検討で分かった。この制御係数の簡便な設計方法としては, まず1質点系に対しては, 制御システムの性能曲線を用いることで, 最適な制御係数を設計することが可能であることを実験的・解析的に確認した。さらに, 1質点系で得られた制御量を多質点系に拡張するため, 一般にパッシブ振動制御で用いられる考え方を本セミアクティブ制御則に適用することを試みた。ひとつは主架構の層剛性に比例して各質点の制御係数を設定する方法, もうひとつは建物に作用すると想定される層せん断力に比例させる方法である。鉄骨造10層の建物を想定して解析的な検討を行った結果, どちらの手法も各層の応答が設計クライテリアを満足し, かつ過度な制御量とならないような合理的な制御係数の設定ができた。さらにこの2つ方法を発展させ, 各層のエネルギー応答量に比例された設計方法についても検討を行ったが, こちらも同様の結果であった。これら3つ設計方法にあまり差が見られなかったのは, 今回想定した建物が比較的層剛性が均一であるためと考えられ, 例えば特定の層が変形しやすいといった不均等な剛性分布をもつ場合の検討等が今後の課題である。
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