本年度は、長屋型アパートに試験設置して2008年3月に稼働を開始した住宅エネルギー情報収集・表示システムについて、各季節ごとの実測調査や居住者へのヒアリング・アンケート調査も交えながら、その使い勝手や居住者の省エネ意識向上及び省エネ効果の検証を行った。本システムは、住宅を取り巻く環境や消費エネルギーを表示すると共に、時期に応じて適切な省エネアドバイスをリアルタイムに提供し、環境に対する様々な居住者の「気付き」を高めることを目的としたシステムである。主な調査結果とその分析を以下に示す。 ・各住戸の省エネ行動実行度とシステムのモニタ画面参考度を比較すると、実行度が全般的に高い1住戸ではモニタ参考度も高く、特にリアルタイムの温度や電力量を参考にしていることが分かった。参考度が全般的に低い2住戸では、温熱環境項目は体感から行動していることが多いとのことであった。また、現状のシステムに対して過去の気象・エネルギーグラフ閲覧や多くのアドバイスなど内容の更なる充実を求めている住戸もあり、居住者の行動レベルに合わせた段階的な内容の組込みも必要であると言える。 ・1住戸では、モニタの情報がきっかけとなって白熱灯から蛍光管へ交換し、居間の照明電力が約1/4となった事例が見られた。また、試験的にモニタを強制停止した時期と比べて台所の消費電力が約4割削減された事例も見られた。その他にもエアコンと扇風機の消費電力の大きな差を認識するなど、モニタの情報によって気付きが向上して省エネにつながったケースが見られた。 ・内外の気象条件等の測定データから随時演算して適切なタイミングで表示を行うメッセージへの居住者の対応状況を見ると、冬期のメッセージ(障子による保温アドバイスなど)への対応が多く、省エネルギーに直結する冬期の室内環境の調整にモニタとこのメッセージが活用されている傾向が見られた。 アパートの居住者の環境意識がもともと比較的高いこともあって、全体として顕著な省エネ効果は把握できなかったが、住戸ごとの調査からはシステムによる明らかな省エネ意識向上と省エネ効果が得られたと言える。
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