研究概要 |
本研究では,ヴィエトナム・フエの伝統的技術保持者(大工棟梁)に伝統的住宅建築(以下,伝統家屋)の模型制作を依頼しその制作工程を記録・分析することで,フエにおいて伝統的に継承されてきた建築技法を解明することを目的としている. 本年度は,研究計画に基づき縮尺1/5の伝統家屋の模型を二棟制作した. 一棟目はフエの大工棟梁による三間二庇の伝統家屋の制作.梁行き断面図の設計方法,平面計画の方法,各部材の断面寸法計画について,制作と並行して聞き取りを行い,整理した.併せて,制作の過程を聞き取り調査の状況も含め,映像として記録した.特に柱,登梁(ケオ),大梁など各部材の断面寸法について,詳細な聞き取りができたことは重要であった. 二棟目は,一棟目および既往の研究で得られた知見との比較考察の必要性から,中部の都市ホイアンの大工棟梁による三問二庇の伝統家屋の製作を行った,当地では「キムボン村大工」と呼ばれる大工集団が伝統家屋に携わる大工集団として知られている.ホイアン近郊で準備調査を行い,キムボン村大工のひとりに本研究への協力を依頼することができた.ホイアンの伝統家屋は構法としては非常に似た方法を取るが,断面寸法の選択方法,建築平面の把握方法,部材の呼称等について若干の違いが見られ,それが建築様式の違いとして表れることが確認できた.またホイアンの建築技術の一端を確認できたことで,結果的にフエの伝統家屋の設計方法の相対化に貢献する情報を得ることができた.二棟目の模型においても,制作過程を映像として記録している. また本年度は,日本建築学会の学術講演会(横浜),アジア建築国際交流シンポジウム(韓国,大邱),日本建築学会関東支部の研究発表会(東京,予定)において,特に伝統家屋の平面認識の方法,特徴的な大工道具について,研究成果を整理し発表を行った.
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