金属/半導体界面の電位分布を解析するために、モデル材として、N型シリコン上にチタンを成膜し、数100℃の熱処理を行ったサンプルを作製した。このサンプルを集束イオンビーム(FIB)装置のマイクロサンプリングにより、試料を抽出し、1μm厚のアルミニウム泊の端に固定した。この抽出した試料をFIB法により、くさび角度30°及び45°のTEM断面観察試料に仕上げた。その後、アルゴン(Ar)イオンビームを照射し、TEM試料表面に形成されたFIBダメージ層を除去した。TEM観察により、チタンとシリコンの間にチタンシリサイドが形成されているのを確認した。次に、試料のくさび形状の均一性を調べるため、二波条件で観察した。等厚干渉縞の曲がりはなく、試料エッジの角度(くさび形の角度)が均一であることを確認した。以上のようなくさび形加工を行ったシリコン/チタン界面領域の電子線ホログラムを撮影した。このホログラムを再生し、位相分布像を構成した。半導体内部のチタン近傍と数100nm離れた領域を比較すると、チタン近傍に位相が進んでいる領域があることが判明した。この結果は半導体内部の電位分布を示す結果である。半導体のドーパント濃度が均一であるため、この位相の進んだ領域が金属/半導体が接触したときに形成される空乏層(ショットキー障壁)であると考えられる。これらの結果をさらに明確にするため、H19年度はくさび形状の試料に電圧(順バイアス及び逆バイアス)を印加し、半導体内部の位相変化を調べたい。さらに窒化ガリウムに電極が形成されたサンプルについても、その電位分布解析手法について検討したい。
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