研究概要 |
微細軸を高速で成形するために,プレートの横面から回転電極を走査する走査放電加工を実施した。専用の電源およびサーボ制御を開発するために,小型の放電加工機を試作した。この加工機上での微細軸の観察あるいは位置決めを容易にするため,テーブル駆動はすべてステッピングモータにより構築した。ステッピングモータによりサーボ駆動を実現するめに,Vfコンバータを介してモータを制御した。また,独自に設けたサーボ不感帯幅を調整することで,放電頻度の向上を試みた。この結果,約5分の加工時間で500μmの丸棒から50μmの微細な軸を得ることができた。微細軸の長さは1.5mmである。軸の形成過程は,単位時間当たりの除去体積を一定とした数式モデルと実験結果とが概ね一致した。しかしながら,軸が細くなるに従って,数式モデルとのずれが生じた。これは,加工の進行に伴って対抗面積が徐々に小さくなることで,面積効果により放電頻度が低下するためである。 軸が微細になるほど,その軸径を任意に調整することが困難であることが明らかとなった。そこで,電気的に絶縁された2枚のプレートにより,微細スリットを作成して,そのスリットの中心に対して走査放電加工を実施した。中心の位置決めは,2枚のプレートへの放電によって流れる電流値が一定になるように制御した。この方法によって,特別な位置決めを行うことなく,自動的にスリットの中心を回転電極が走査できることを確認した。スリット間隙を任意に設定することによって軸径を制御することができた。製作した微細軸を加工機から取り外すことなく,そのまま絶縁性セラミックスへの微細加工に適用した。この結果,絶縁性シリコンナイトライドセラミックスに対して,約30μm(深さ200μm)の微細穴加工に成功した。
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