本研究では、基板上へDNAを固定化し、KPFMという手法を用い、DNAの電気的特性の評価を行った。サンプルには、SiO2、HOPG上のDNAを用いた。KPFM測定は、大気中で行い、カンチレバーには、金コートされたシリコン製SI-DF3-A(SII製、バネ定数:1.8N/m、共振周波数:約25.3kHz、Q値:約170)を用いた。KPFM測定では、探針-試料間に電気振動を印加し、静電気力を測定することにより、接触電位差を測定する。したがって、探針-試料間に印加する電気振動の電圧(V_<AC>)および周波数(f_<AC>)は、非常に重要なパラメータであるため、これらを変化させ、測定を行った。 DNAの表面電位は、基板を基準にして、SiO2上では、+5〜8mV、APhS-SAM上では、+5〜8mV、HOPG上では、-20mVであった。以上から、表面電位の大きさは、SiO2、APhs-SAM<DNA<HOPGであることがわかった。 SiO2では、DNAはMg2+を介して、基板と配位結合している。したがって、DNAと基板は、イオン複合体を形成している。APhs-SAMでは、DNAのリン酸イオンとアミノ基で、SiO2と同様に、イオン複合体が形成する。ここで、双方とも、DNAが基板より高い表面電位を持つことは、DNAの基板への吸着の影響ではなく、表面のMg2+または、表面吸着水の層と負に帯電しているDNAとの間に形成された双極子モーメントが、基板から空気へ向かう方向を持っていることを示唆している。また、HOPGにおいては、DNAが基板より低い表面電位を持つことは、HOPGの導電性あるいは、HOPGとの吸着の影響が前者の基板よりも大きいことによる、負電荷のDNAの作用によると考えられる。
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