本年度は、種々の膜分離法の階層化、そしてそれぞれに適したモデリング手法の選定を行った。具体的には、膜法を、分離形態(ガス透過、濾過、逆浸透など)、膜種類(精密濾過膜、限外濾過膜、ガス分離膜など)で分類した。さらに、適用範囲を明確にするために、応途(水素精製、アルコールからの脱水、水処理など)、推算すべき膜性能値(透過流束、分離係数、回収率など)で階層的に分類し、それぞれのケースについて、マルチスケールモデリング手法で推算される膜性能値を計算するのに適したモデリング手法を選定し一覧表としてまとめた。さらにこれらモデリング手法について、複数のモデリング手法を利用する場合を想定し、計算化学の専門家ではない実験系の研究者が、容易に利用できる環境の構築を行った。具体的には、上記で体系化された情報を、各モデリング手法の補完関係が視覚的に理解して推算経路を確認できるような、利用環境インターフェイスの作成に着手した。本年度は、微細孔をもつ分離膜の分離係数を原子間相互作用に基づいて計算できるグランドカノニカル分子動力学法シミュレータを開発し、さらに利用を容易にできるように入出力グランドカノニカル分子動力学法、および解析インターフェイスの開発を行った。また、マルチスケールシミュレータを実現する平均場ポテンシャルの作成シミュレータ、平均場ポテンシャルにもとつくマルチスケール動力学法シミュレータを開発し、当初の目的をほぼ完遂した。
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