本年度は、前年度に引き続き汎用ツールの開発を行った。多孔構造をもつ分離膜の透過性を予測するために、吸着量をグランドカノニカルモンテカルロ法および構造活性相関で評価し、拡散性を非平衡系メソスコピック・モンテカルロ法で解析、両者を併せて膜透過係数を求める方法を考案した。この方法に基づき汎用プログラムを開発し、二酸化炭素分離システムに最適な膜構造の探索に適用した。その結果、100種類以上の膜構造の性能評価を高速に行うことが確認され、二酸化炭素分離に対して1000以上の分離係数をもつ膜が選定された。また、本年度の計画に含まれていた汎用プログラム公開については、日本膜学会と協力して「膜学実験法「人口膜編」講習会」(平成19年11月9日、神戸で開催)でプログラムを配布し、利用方法の講習を行った。また、プログラムの一部は、分離技術会のホームページ(http://www.sspej.gr.jp/)において「計算化学シミュレーション講座」として解説・公開されている。また、人工透析膜の分子シミュレーションについても開始した。このように、本年度はプログラム開発が軌道にのり論文発表・依頼講演などが増えたことから、当初計画された実験的検証よりも汎用プログラム開発と公開の比重が増えた。しかしながら、実験的検証は外部研究者の協力を得て進めており、来年度の目的を達成するに十分なデータを得ている。以上より、当初の目的はほぼ完遂したといえる。
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