単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の触媒成長技術を確立すべく、コンビナトリアル触媒探索(CMD)法を用い広範な条件を効率的に調べる。反応/触媒条件と現象の対応を整理した上で、(1)触媒粒子形成と動的変化、(2)触媒粒子構造とSWCNT成長モードの関係、(3)酸素源添加効果、(4)SWCNTの核発生と成長を検討、既往の知見もあわせ構造化し全体像を構築する。 平成20年度は、以下の検討を行った。(1)(2)に関し、CVD法での数mm/数minというSWCNTの高速成長中に、基板上に担持した触媒粒子が粒成長を起こし、SWCNT直径の増大を招いた。高速成長のその場観察により、SWCNT成長は急停止することを見出した。個々の触媒粒子の粗大化・失活が引き金となり、炭素供給が活性粒子に集中し失活を加速するというフィードバック機構が原因と考えられ、合成技術の更なる進歩には触媒粒子の粗大化抑制が鍵と明らかにした。(1)に関し、上記高速成長は触媒粒子が溶融する高温で起きるが、低温でのCNT合成もデバイス応用に重要である。低温では触媒からの炭素析出が律速となり失活し易いと考え、CVD温度と前駆体C_2H_2の供給分圧との関係を検討、安定した合成ウィンドウを明らかにするとともに、400℃という低温での垂直配向成長も実現した。(3)に関し、C_2H_5OHは酸素源を含有する炭素源として、SWCNT合成の実績が豊富である。Co/Al_2O_3触媒によりSWCNTの、Co/SiO_2触媒によりMWCNTの、ミリメータ垂直配向成長を達成、また分解生成ガスを模擬したC_2H_2+H_2O系ガスにより同様な成長も実現した。(4)に関し、CVD法によるSWCNTの基板上成長は、(i)原料ガス供給、(ii)気相反応による前駆体生成、(iii)前駆体の気相拡散、(iv)前駆体のSWCNT膜中拡散、(v)前駆体の触媒への取り込み、(vi)炭素の触媒内/表面拡散と触媒からの析出という素過程の直列で表され、SWCNT成長結果から律速段階を明らかにし、また反応条件を設計する方法論を確立した。
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