前年度までに、振動翼の推進性能を測定しうる2次元PIV装置付小型回流水槽装置を製作した。これにより、水中振動翼周囲の流場観察を定量的に行い、振動翼の性能と振動翼の振動数や振幅や流場等の関連性についての基礎データを得ることができた。そこで半翼表面を磁気感応型形状記憶合金の薄膜で覆い、翼表面の粗度を変化させることにより、境界層の乱流遷移ならびに翼表面摩擦抵抗の能動制御を行うことができる知能構造の機能を持たせることを目的としている。このようなスマート翼振動方式の水中推進器の研究開発は過去例がない。TiNi形状記憶合金の薄膜を用いて表面にディンプルを形成しディンプルの形状や傾き等をレイノルズ数に応じて能動的に制御させることにより、摩擦抵抗あるいは剥離に対し推進時の流速に応じて最適な表面凹凸形状を得られるような翼を開発した。また、そのための予備実験として、まず、アクリル製の翼表面に多くの凹凸を付け、揚抗比特性を調べた。表面凹凸における、各凹凸の大きさ、凹凸の形状等によって、揚抗比ならびに失速角が変化することが観察された。凹凸の状況によっては、揚抗比ならびに失速角の向上が観察され、その翼周囲の流場の観察も行った。これらの結果をもとにして、凹凸が変化する、あるいは、凹凸が生じたり消えたりするスマート翼の開発に結び付けることが出来た。以上のように、本研究の目的を研究計画通りに達成した。
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