「研究の目的」に沿って、クロロフィルの紫外線励起による光学特性を調べ、船舶に搭載可能なレーザーリモートセンシング装置(ライダー)を開発し、試験水槽および実海域で観測性能評価を行った。 1、クロロフィルの紫外線励起光学特性 日立分光蛍光光度計F-2500を用いて、クロロフィルa試薬に波長355nmの紫外線を照射し、そこから出る蛍光の分光スペクトルを測定した。その結果、波長440nm(青色)付近を中心とするなだらかな発光と、波長670nm(赤色)を中心とする強く鋭い発光ピークが存在することが確認できた。これは文献通りである。一方、屋外水槽の氷や海水等の自然水についても分光蛍光測定を行ったところ、クロロフィルaによるものと思われる青色発光は見られるが、赤色発光ピークが大きく減衰していることが判明した。このため、当初の予定通り、紫外線励起-青色発光観測のライダー装置を開発することとした。 2、ライダー装置開発 波長355nm、532nm共に照射可能なパルスレーザーを購入し、直径200mm望遠鏡、光学フィルター、光電子増倍管モジュールを組み合わせて、1波長観測の蛍光ライダー装置を開発した。また、ライダー装置をコンピュータ制御するためのソフトウェアと、この装置を船舶に取付けるための架台も製作した。 3、試験水槽および実海域での観測性能評価 深さ34mの試験水槽で、底部に個体の蛍光物質としてPET板を設置し、ライダー観測による検出に成功した。この際、光電子増倍管のゲート機能が重要であることが明らかとなった。また、実際の船舶に取付けて調査航海する機会を得たので、1波長ライダー海洋観測を行い、ライダー信号に対する波浪の影響が非常に大きいことを確認した。
|