本研究は、局所電極型3次元アトムプローブ(Local Electrode Atom Probe : LEAP)と電解イオン顕微鏡(Field Ion Microscope : FIM)を連続的に観察し、これに陽電子消滅法を組み合わせることによって、軽水炉鉄鋼材料やジルカロイ等の劣化に重要な役割を果たす微小欠陥一不純物・溶質ナノ析出物複合体を、3次元実空間で解析を行う方法の確立を目的とする。本研究では、まず陽電子消滅法を用いて、材料中に存在する欠陥種類(空孔、空孔集合体、転位)を同定し、欠陥周囲の化学元素情報から欠陥サイトを絞り込み、次に陽電子消滅法によって予測された欠陥サイトが現れるまでLEAPを用いてアトムプローブ測定を行い、現れた時点でアトムプローブを停止して結像ガスを導入し、測定をFIMに切り替える。FIM像はアトムプローブ測定に比べて空間分解能が非常に高いため、空孔集合体や転位等の欠陥構造を解析できる。さらに、試料原子を剥ぎ取りながら連続的にFIM像を観察し、原子位置の3次元再構成を行い、LEAPで位置決定をしたナノ領域での欠陥構造を3次元実空間で明らかにしようとする。 今年度は、まず、原子炉圧力容器鋼モデル合金であるFe-Cu合金を中性子照射し、陽電子消滅法、特に同時計数ドップラー広がり法を用いて、照射によって導入された空孔集合体周囲の化学元素分析を行った。その結果、空孔集合体の周囲にCu原子が覆った構造をもつ空孔-Cu原子集合体の形成を確認した。来年度には、このサイトの実空間分析をLEAPとFIMを組み合わせて行う。そのため、今年度は陽電子消滅測定と平行して、LEAP装置のイオン検出器部分の改造(高速転送CCD)を行い、FIM像を連続的に観察出来るようにした。
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