本年度は以下の成果を得た。1と2は当初の研究計画どおりであったが、さらに3に挙げたように燃料電池用の電解質、電極反応の解析において成果を得ることができた。 1.前年度に見出したγ-Fe203をリチウムイオン電池正極としてさらに発展させ高性能化を図った。前年度は炭素材料としてアセチレンブラックを用いたが、ケッチェンブラックを用い、また合成雰囲気を酸素とすることで、γ-Fe203の担持量を変化させることが可能となることを見出し、電極の容量を上げることに成功した。また、インピーダンス測定結果を詳細に解析することで電極反応時の炭素の電気二重層の寄与が定量的に評価できた。同時にFe203の電気化学反応時の電荷移動反応の抵抗は、炭素量が少ないと電極の抵抗が大きく影響し、炭素量は50wt%程あるときにFe203のリチウムとの電気化学反応が律速過程となることがわかった。他の材料のリチウムコバルトバナジウム酸化物を合成して、リチウムイオン電池材料としての評価も行うことが出来た。 2.超高速に特化した場合の性能評価 γ-Fe203と炭素との複合体を用いて導電率の高い水溶液系のセルを作製して超高速充放電試験を行ったところ、電極抵抗の低減が重要な因子となっており、セルの構成や、対極の配置、さらに集電体の形状など種々の工夫を行い、超高速充放電のための今後の電極構造の指針を得ることができた。 3.インピーダンス測定に使用した種々の解析は、燃料電池の電解質及び電極解析にも利用することができ、界面反応の解析を行うことができた。また、ポーラス構造の類似性があることから燃料電池電極構造の設計にも発展させることができた。
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