研究概要 |
昨年度に引き続き,未培養のメタン生成古細菌(メタン菌)を分離するために私が開発した新規メタン生成古細菌の培養法である嫌気共生培養法を用いて,様々な環境から採取してきた土壌サンプル等を植種源として培養を行った。その結果,Methanomicrobiales目やMethanocellales目の新種あるいは新属新種を代表すると考えられる種のメタン菌を新たに10種程度集積培養することができた。さらに,これらの新規なメタン菌の中から3種類のメタン菌の分離に成功し,菌学的な特徴の決定を行った後に,命名を行った。 難培養性微生物の代表である嫌気性メタン酸化古細菌の培養を行うために,昨年度から引き続き新規嫌気性培養器を用いて培養を継続して行っている。昨年度は和歌山県沖の南海トラフから採取してきた深海堆積物を植種源にした培養系だけであったが,今年度は新たに下北半島東方沖で採取された深海底堆積物コアサンプルを植種源として培養を始めた。培養を開始してから9月経過した後に培養系内に嫌気的メタン酸化古細菌が生育しているかを確かめるために16S rRNA遺伝子に基づいた解析を行った。その結果,嫌気的メタン酸化古細菌を培養することができているというデータをとることができた。現在まで,嫌気的メタン酸化古細菌を培養できた例はほとんどなく,これは非常にインパクトのある成果である。さらに本年度は,昨年度作成していた嫌気的メタン酸化古細菌の検出、定量をするための16S rRNA遺伝子を標的にしたプライマーセットを用いて,環境中の嫌気的メタン酸化古細菌の多様性の調査を行った。その結果,いくつかの水田土壌において嫌気的メタン酸化古細菌が存在していることを明らかにした。水田は主要なメタンガス放出源であり,この発見も非常にインパクトがある。
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