昨年度に引き続き、未培養のメタン生成古細菌(メタン菌)を分離するために私が開発した新規メタン生成古細菌の培養法である嫌気共生培養法を用いて、様々な環境から採取してきた土壌サンプル等を植種源として培養を行った。この培養の過程において、エタノールからメタンを生成するメタン菌を発見し、培養、そして分離に成功した。エタノールからメタンを生成するメタン菌は極めて珍しく、本研究が2例目の分離報告例である。加えて、最も酸性域で生育可能なMethanoregula属メタン菌と非常に近縁なメタン菌の分離に成功した。このメタン菌は中性域でのみ生育可能であり、酸性域で生育するメタン菌との比較を行うために重要なメタン菌であると考えられた。現在アメリカのチームと共同研究でゲノム解析を含めた詳細な生理学的特徴について調査を行っている。 難培養性微生物の代表である嫌気性メタン酸化古細菌およびメタン菌の培養を行うために、昨年度から引き続き新規嫌気性培養器を用いて培養を継続して行っている。その結果、メタン菌の培養を狙った新規嫌気性培養器において培養開始から289日後にメタンの生成が確認された。水質・ガス分析および16S rRNA遺伝子とmcrA遺伝子に基づいたクローン解析の結果から水素資化性のメタン菌が嫌気性培養器で生育しているものと推察された。続いて、本嫌気性培養器から従来の培養を用いてメタン菌の培養を試みた結果、Metanobacterium属、Methanosarcina属、Methanococcoides属に属する3種のメタン菌を培養することに成功し、ほとんど知見が無かった深海底環境からのメタン生成機構を解明するための足がかりを掴むことができた。
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