Bacillus thruingiensis(以下Bt)が生産する結晶性毒素タンパク質は特定の昆虫のみに殺虫活性を示すが、人畜や環境に影響を与えないため、主に有害昆虫を駆除するための環境に安全な生物農薬素材として、基礎から実用化に向けて多くの研究が進められてきている。ところが近年、本研究室では殺虫活性は示さないが、特定の哺乳動物細胞を選択的に認識・破壊するBt毒素タンパク質 (パラスポリン2) を同定した。本研究ではこの毒素タンパク質の細胞認識に対する細胞認識と細胞死のメカニズムを明らかにし、医薬学、生体工学応用への基礎とする。本年度は毒素の標的細胞への破壊機構と細胞受容体の同定、および構造機能相関の解明を目標に以下のような研究成果を得た。 1) パラスポリン2結合タンパク質(受容体の候補)として約27kDaの毒素結合タンパク質を同定した。 2) パラスポリン2や他の膜孔形成毒素が生体膜中で600kDa〜1MDaの大きな毒素複合体を形成していることを見出した。この毒素複合体を精製したところ細胞由来の30kDaタンパク質因子が含まれていることが分かった。このタンパク質は抗Hep27タンパク質抗体と反応するため、受容体成分を媒介とする巨大分子複合体の形成が考えられた。
|