研究概要 |
パルミトイル化は他の脂質修飾とは異なり可逆的であり、外界刺激依存性にサイクリングしている。これまでに、我々は全23種類からなる新規パルミトイル化酵素群をゲノムワイドに単離し、その機能解析を進めてきた。今年度はパルミトイル化酵素ファミリーの活性制御機構を明らかにするために、DHHCパルミトイル化酵素に結合する蛋白質を脳組織から特異性高く精製し、高感度質量分析装置を駆使してその構成蛋白質を明らかにした。具体的にはDHHC2結合蛋白質としてDHHC20を含む複数の蛋白質を見出した。また、DHHC3結合蛋白質としてintegrinなど複数の膜蛋白質を同定した。さらに、DHHC8,DHHC21に結合する蛋白質を同様の手法を用いて次々に同定しつつある。これらの解析を通じて、パルミトイル化酵素群のサブファミリー特異的な活性制御機構の一端を明らかにした。 一方、我々は前年度までに神経活動の下流でPSD-95パルミトイル化酵素DHHC2の活性がダイナミックに変化することを見出している。今年度はDendra2融合蛋白質を用いたphotoconversion法を駆使して、PSD-95やDHHC2酵素の動態を神経細胞で可視化し、これら蛋白質の動態制御機構を検討した。興味深いことに、神経活動を遮断することによりPSD-95はより膜近傍に集積し、AMPA受容体の恒常性維持に重要な役割を果たしていることを明らかにした。本研究課題は平成20年度科学研究費補助金(若手研究(S))に係る交付内定通知の受理(5月)に伴い、若手研究(S)に専念するため廃止した。
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