研究概要 |
本研究においては、p53の下流遺伝子のうち細胞老化に関与する遺伝子の単離と同定を試みている。研究計画書における18年度の具体的な実験計画は以下の通りである。 1、p53遺伝子過剰発現の際の遺伝子発現変導 2、ヒト各種痛および前癌病変における遺伝子発現情報、 3、ヒト線維芽細胞株、及びヒトケラチノサイト細胞株継代に伴う遺伝子の発現変化 4.データ統計解析及び候補遺伝子の絞込み 5.アレイに用いたRNAサンプルを用いてRT-PCRによるデータの確認 18年度中に行った研究成果としては、上記のうち1,2の項目に関してはこれまでの解析結果をもとに、データの収集は終了した。 3に関してはヒト正常線維芽細胞を用いて継代培養を行った際に、p53の蛋白質の蓄積と、その下流遺伝子であるp21の転写レベルでの誘導を確認した。またこの際に老化のマーカーであるsenescence associated β-gal(SA-βgal)染色が陽性化し、また細胞増殖率も継代とともに低下することが観察された。このサンプルを用いて、36000spotを配したmicroarray解析を行った。またケラチノサイトに関しては細胞継代可能数が少なく(継代6回で増殖停止)老化マーカーも陽性化しなかったため解析対象から除外した。 4,5に関しては、上記の1,2,3のデータを元に解析を行った結果、p53過剰発現で誘導され細胞継代に伴って発現上昇する14遺伝子を同定した。またp53により発現誘導され前立腺癌の前癌病変で高発現し癌組織で発現低下が見らている1遺伝子を同定した。これらの結果はRT-PCRにより確認済みである。これらの解析結果よりスクリーニングされた15遺伝子について今後細胞老化における役割について解析を行う予定である。
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