研究課題
がん細胞の浸潤・転移など、様々な疾患と深くわりのある細胞接着や運動に関して、Rhoファミリー低分子量G蛋白質が重要な役割を担っていることがこれまでにも数多く報告されている。今回我々は新しいタイプのRhoファミリーG蛋白質活性化因子の1つであるDock4が、Rac1を活性化することを見出した。また別のRhoファミリーG蛋白質であるRhoGとその標的蛋白質ELMOによって、Dock4のRac1に対する活性ならびに細胞内での局在が制御されていることも明らかとなった。次にDock4の細胞における機能を明らかにする目的で、RNA干渉によりDock4の発現を特異的に抑制させたNIH3T3繊維芽細胞を樹立し、それを用いて解析を行った。その結果、コントロールの細胞は親細胞と変わらない運動能を示したが、Dock4ノックダウン細胞はその運動能が有意に抑制されていることが確認された。以上の結果から、RhoGはDock180以外にDock4の活性も制御しており、細胞運動の調節においてRhoG-ELMOを介したDockファミリーの活性制御が重要な役割を担っていると考えられる。一方我々は、別の低分子量G蛋白質であるR-Rasがインテグリンの活性化を引き起こすことに着目し、我々が見い出したセマフォリン受容体Plexin-B1のR-Rasに対するGAP活性と細胞運動との関係を検討した。その結果、Plexin-B1はリガンド依存的に細胞運動を抑制し、それにはPlexin-B1が持つR-RasGAP活性が必要であった。さらに詳細に検討したところ、β1インテグリンの活性がリガンド刺激によって引き起こされるPlexin-B1のR-Ras GAP活性により抑制され、それに伴ってFAKのリン酸化などインテグリンの活性化により引き起こされる細胞内シグナルが抑制されることを見出した。以上の結果から細胞運動の制御にR-RasとPlexin-B1が関与しており、Plexin-B1のR-Ras GAP活性によるβ1インテグリンの活性制御が細胞運動の調節に重要な役割を担っていると考えられる。
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