研究概要 |
頭部形成及び脳領域化とDVE/AVEでの遺伝子発現のパターンとの関係を明らかにするため、DVE/AVEで遺伝子の発現パターンを変化させる系を構築している。 初めにDVE/AVEで発現を示すLefty1のエンハンサーを用いて、この制御下にテトラサイクリンにより発現制御されるTet-ON/OFFシステム導入した。現在、このTet-ON/OFFシステムを導入したトランスジェニックマウスを選定中である。これらを使用する条件を検討するため、Lefty1の発現開始時期を調べた。その結果、DVEができる5.5日胚より2日程前の着床以前の胚からその発現は観察された。この発現パターンを追っていくと着床前後付近で原始内胚葉では非対称な発現が現れ、この非対称性が後の5.5日胚のDVEでの非対称性に変換されることが推測された。DVEでのLefty1の非対称な発現は前後軸を形成する引き金となる現象であることより、原始内胚葉での非対称性を形成する機構と着床現象の関係をハンギングドロップ法で調べた。この結果、着床とLefty1の原始内胚葉での非対称性は無関係であることが明らかとなった。また一方、Lefty1のエンハンサー領域をシス解析した結果、Nodalシグナルを伝える転写因子Foxh1の結合配列の重要性が明らかになり、確かにこのLefty1の発現はFoxh1欠損胚では消失していることからFoxh1を介したNodalシグナルによりLefty1の発現制御は行われていることが明らかとなった。しかし、Nodalシグナルの構成因子であるNodal,Cripto,Foxh1のそれぞれのmRNAレベルでの発現は対称であることよりこれらの情報がどのようにしてLefty1の非対称な発現を制御しているかは今後の課題である。
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