計測機器は当初予定していたXCT Research SA+ではなく、新たに開発を依頼・特注した機器「XCT 2000 Research+」を導入した。このCTは、大型の霊長類の体肢も計測可能で、解像度もXCT Research SA+と変わらないという利点がある。動物試料の収集は、医薬基盤研究所・霊長類医科学研究センターからカニクイザル九頭とアカゲザルー頭、徳山動物園からカニクイザルー頭、到津の森公園からマンドリルー頭、フランソワルトンー頭、ニホンザルー頭、その他哺乳類八頭、宮崎市フェニックス動物園から猛禽類一頭の提供を受けた。これらの標本を浸漬・固定するための機材を整備し、計測に関するプロトコルを確立するに至った。問題点としては、ひとつの長管骨の計測に非常に時間がかかること、また、CTのX線発生器の寿命が予想外に短いことが挙げられ、骨計測に関して更なる効率化を図らなくてはならないことが判明した。 本年度の成果:霊長類三種を対象に、上腕骨および大腿骨における筋・腱・腱膜付着部と筋量の相対量について比較を行った。結果1筋重量と筋/腱ノ腱膜付着部の大きさに相関は認められないことが見出された。筋量は生後の環境に応じて変化するものであり、付着部の大きさに関しては生後め変化が少ないものであるとすると、当然の結果であるのかもしれない。骨の表面は限られたスペースであるので、付着部のスペースはお互い密接している.行動様式に関連した種間比較では、他の筋の発達のためにスペースを失った結果、付着部が小さくなり、粗面が隆起し発達したようにみえるのか、本当に筋が大きくなって粗面が発達したのか見極める必要がある。何が一次的で何が二次的なものかということに注意し、系統関係を踏まえた多くの霊長類種を比較することで、本研究の今後の発展が望めることが示された。
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