動物試料の収集は、医薬基盤研究所・霊長類医科学研究センターからカニクイザル31頭の提供を受けた。本年度は霊長類種間の比較を行う予定であったが、データの精度向上のため、種内個体変異を中心に調査を行った。 体肢骨における筋付着部の大きさと筋重量の関係について、カニクイザル(Macaca fascicularis)を対象に調査を行った。腱膜付着部長および筋・腱付着部面積と筋重量の間に相関関係は見られなかった。また、筋・腱付着部面積と筋力の指標値にも相関関係は認められなかったが、それぞれの筋において付着部の大きさと筋重量および筋力の間には、一定の定量関係があることが示された。つまり異種間の比較にこの方法が有効であることが示唆される。また、付着部の大きさに対して筋重量や筋力指標値が相対的に大きい筋では、そうでない筋に比べ、単位面積あたりの骨への作用が相対的に大きいために、粗面として骨に痕跡を残しやすいことが定量的に示された。 また、筋の力学的指標値を精査するための調査も追加し、カニクイザル(Macaca fascicularis)を対象に、固定の影響による3つの計測値(筋重量、筋線維長、筋紡錘角)の固定状況による影響について調査した。筋重量および、筋紡錘角に関しては固定状況による変化を受けにくい結果を示した。一方で、筋線維長に関しては、固定状況による上肢の屈曲・伸展もしくは回外・回内などの変化により、大きく影響を受けることが示唆された。筋それぞれの回帰直線に固有の傾きと切片の値を持つことから、筋の形状によってこれらの係数が決まる可能性があり、この結果は、筋形態が類似したものであれば、異なる固定状況によって変化した筋線維長の補正を本研究が可能にするものであることが示唆された。
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