今年度は、受容領域のタイル化を制御するTrcキナーゼと遺伝的相関をしめす分子群の網羅的スクリーニングを行い、複数の候補分子を同定した。とくに分子量60kDaの分子(p60)は、これまでに報告が無い機能未知の分子であり、C末にPHドメインを有する。免疫沈降法により、p60はTrcキナーゼとN末領域を介して結合していることを明らかにした。またRNAiノックダウン法によりp60の発現を抑制すると、Trcキナーゼの活性が抑制された。したがってp60はTrcキナーゼの膜移行および活性化に必要な分子であると予想される。現在、RNAi法および変異体を用いてp60の詳細な機能解析行っている。 加えて、受容領域の維持機構を明らかにする為に、ゲノムワイドRNAi法用いたスクリーニング・システムを確立した。この方法を用いて100遺伝子に関してパイロット解析を行い、樹状突起の維持を制御する遺伝子候補を5つ同定した。中でも、CDK9はmRNAの伸張に関わる因子であるが、分裂後神経細胞では異なる機能を果たしている可能性が示唆されており、今後注目して解析を行う予定である。 一方で、ニューロン特異的に脂質結合プローブを発現するトランスジェニック系統の作成に成功し、それを用いて脂質代謝物のライブ・イメージングを開始した。特に、ホスホイノシチド(PIP2、PIP3)、ホスファチジン酸(PA)の時空間的変動に注目して解析を進めている。
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