昨年度にイネ栽培課程において最も強く低温による障害をうける出穂前の葯および花粉についてSuperSAGE法を用いた網羅的な遺伝子発現解析を行い、ひとめぼれの穂ばらみ期の植物体から葯組織、花粉におけるSuperSAGE法による網羅的な遺伝子データを得ることができた。今年度はイルミナ社の次世代シークエンサーを利用したSuperSAGE法を開発し、同様に花粉、葯組織を各々30万タグ以上解析した(論文投稿中)。これらのうち花粉での発現しているタグおよび低温応答性のタグ配列について遺伝子のアノテーションを行った。それらアノテーションされた遺伝子配列についてデータベースに登録されているイネ日本型とインド型品種間での多型を比較した結果、花粉で発現している遺伝子ではアミノ酸置換を伴う多型が多いことが明らかになった。同時にそれらの遺伝子のプロモーター領域の多型も解析している。データベースの中のインド型イネ品種のゲノム配列情報は限られていることから、独自にインド型イネ品種C8005の全ゲノム配列を次世代シークエンサーにより解析し、配列多型情報を収集した。それらのデータと品種日本晴のゲノム配列との比較の結果、多くの配列多型を見出すことができた。それらの多型、花粉での遺伝子発現情報を組み合わせて耐冷性識別マーカーの同定を実施中である。本研究によるデジタル遺伝子発現情報とゲノム配列情報を組み合わせて育種への利用を目指した多型(マーカー情報)を収集する解析戦略を確立できた。
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