研究概要 |
今年度は、Ca^<2+>耐性を示したscz5, scz13, scz14に注目して解析を行った。scz13変異の原因遺伝子は、ERの内膜に局在するα-1, 2マンノース付加酵素の遺伝子ALG9であった。膜タンパク質のグリコシレーション不全により、Ca^<2+>シグナル伝達が阻害されると予想され、細胞膜周辺のシグナル上流伝達機構の解明の手がかりが得られた。実際、alg9破壊株を作製し、表現型を調べたところ、Ca^<2+>シグナルによる異常極性成長が抑圧された。さらに他のERの内膜に局在するalg破壊株も同様の表現型が得られた。興味深いことに、alg9株の温度感受性表現型は、PKC1またはRHO2の高発現により抑圧されたことから、遺伝学的関連性が示唆された。さらに糖鎖不全によりG1サイクリンの転写量の発現低下が観察されこのことが、Ca^<2+>耐性化の一要因であることが示唆された。また極性成長に関わる因子の一つSpa2がCa^<2+>による極性成長に重要な機能を持つことが示唆された。 scz5変異の原因遺伝子は、RNAポリメーラーゼIIのホロ酵素の遺伝子SSN2、scz18変異の原因遺伝子は、テロメア末端付近の遺伝子の転写を抑制するSIR3であった。それぞれのタンパク質にHA等のタグを付与し、Ca^<2+>シグナルによりどのような影響(タンパク質の量の変化・翻訳後修飾・局在の変化など)を調べた結果、Ssn2, Sir3共にCa^<2+>により分解を受けた。さらに、Ssn2はA-キナーゼによるリン酸化を受け、SWE1, CLN2の転写に関わることを見出した。Sir3もCLN2の発現に関わることを見出した。これら結果は、Ca^<2+>シグナルが関与する細胞周期・極性成長にこれらが遺伝子発現に重要な役割を担うことが示唆された。
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