従来の木材炭化では蒸発してしまっていた熱分解ガスを利用し、炭化を気相で行うことで、これまでにない高い構造規則性を持つ針状炭素物質「円錐黒鉛ウイスカ」を、木材から創り出した。気相炭化法では木材の細胞が(1)原料となる炭素ガスの発生源、(2)炭素ガスを蓄え過飽和状態にして析出させるための反応容器(ある種のマイクロリアクタ)として、二重の役割を担う。2500℃での加熱過程で、細胞壁から発生する熱分解ガス中の炭素を原料として生成した、直径数μm、長さ数十μmの炭素物質「円錐黒鉛ウイスカ」は、ベータ炭化ケイ素結晶が鋳型として、円錐形の炭素六角網面として高度な規則性を持って析出する。このユニークな構造規則に由来する、磁場配向性、複屈折性、ウイスカ表面のカーボンナノチューブを巻きつけたような構造(Nanoterminated surface structure; NTSS)が明らかとなった。
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