本研究は、遺伝子組換え作物・食品(GMO)をはじめとする農業科学技術の研究開発とリスク分析を対象に、その一連の過程に関わる科学者・専門家・為政者の社会的・倫理的省察の必要性が広く認識されるようになってきた欧州諸国における科学技術政策の動向、とくにGMOに関連する各種研究プロジェクトの実施状況を考察しながら、当該技術領域における学際的アプローチの意義と課題を明らかにするとともに、そうした「専門知の学際化」の試みと到達点が、経済協力開発機構OECDや国連機関FAOなどバイオテクノロジー・ガバナンスに関わる国際諸組織でいかに共有され、実践に移されようとしているのかを明らかにすることを課題としている。第2年度にあたる平成19年度は、当初予定では(1)英国経済社会研究機関ESRCの「ゲノミクス・ネットワーク」に参加するエジンバラ大学Innogen関係者、(2)欧州委員会の科学技術政策担当者、(3)OECDの政策担当者、(4)国連FAOの担当者へのヒアリング調査を実施する予定だったが、(1)については前年度に前倒し実施し、(2)〜(4)については11月に開催した国際研究集会を優先したため、本年度は文献資料の収集整理にとどめ、ヒアリング調査の実施は次年度に先延ばしすることにした。また、8月に渡仏の折に、フランス農業研究所INRAの研究者と意見交換をすることができた。研究代表者がホストとなって11月に京都大学で開催した国際研究集会「Reconstructing Agro-biotechnologies for Development?」には、本研究課題であるバイオテクノロジー・ガバナンスに関する専門家(本助成金で招聘)を含め、13ヵ国32名の研究者・大学院生が参加し、GMOをはじめとする農業バイオテクノロジーをめぐる「科学技術と社会の関係性」について、理論的・実証的・実践的な観点から総合的な討論を行った。前年度及び本年度の本研究課題の成果を一部踏まえた研究代表者による報告を含め、国際研究集会の成果は編著書として、オランダの出版社から近刊予定である。
|