研究概要 |
高潮や洪水の氾濫とともに沿岸域の農地へ流入する土砂は,その復旧に時間と労力を要することから,対策が求められている.本研究では,氾檻モデルに土砂の移動限界流速を指標としたモデルを組み込み,土砂流入箇所を推定するモデルを構築した.本モデルのベースとなる氾濫モデルには,これまでに開発してきた「氾濫域流況詳細解析モデル」を用いたが,収集した被害状況データのばらつきがあるなどの問題があり,モデルの詳細な検証が充分ではなかった.このため,本研究では,リモートセンシング画像を元に算定した農業被害域データを利用し,氾濫モデルの検証を行うとともに,モデルの改良を行った.本モデルの現地適用例として,1999年18号台風での八代海湾奥部の農地への高潮災害を再現し,土砂流入箇所の推定を試みた.その結果,氾濫域の推定精度はやや低いものの,実際に土砂が流入したと考えられる3地点をほぼ推定することができた.本モデルの構築により,浸水時の土砂流入対策を実施する箇所を特定でき,効果的な減災対策を実施することが可能になる. 一方,水路を伝播し越水する氾濫水の流れは,水路の破損を引き起こす原因となる.このため,水路からの氾濫現象を精度よく解析できるモデルの構築が求められる.18年度は,水理模型実験を実施し,本モデルの検証用データを収集した.また,本モデルの解析結果を一般の市民にもよりわかりやすく配信するためのWebシステムのプロトタイプを作成した.
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