研究概要 |
本年度は,昨年度実施した「排卵過程の卵丘細胞に発現する遺伝子のデータベース化」の結果から,親水性の分泌因子の細胞からの放出に関与するエキソサイトーシス機構とプロテアーゼによる修飾機構について検討を行った. その結果,エキソサイトーシスに関与するSNAP25が,排卵過程においてプロジェステロン受容体依存的に発現していた.プロモーター活性測定の結果,卵巣でプロジェステロン受容体が転写因子であるSP1と相互作用し,Sp1/Sp/3サイトを介して,発現を制御していた.一方,Snap25が発現する神経細胞では,プロジェステロン受容体の過剰発現を行ってもプロモーター活性に影響はなかったことから,卵巣特異的制御機構が明らかとなった.さらに,siRNA法によるSnap25の遺伝子発現ノックダウン実験により,サイトカイン類の分泌がSNAP25によるエキソサイトーシス依存的であることも示された. 昨年度に明らかとしたEGF like factorは細胞膜貫通部位,プロテアーゼによる切断部位とEGF部位を有し,プロテアーゼによる切断によりEGF部位が遊離し,標的細胞を刺激可能となる.様々なプロテアーゼ抑制剤を用いた実験から,TAPI-2が選択的に卵丘細胞のEGF like factorの機能を抑制したことから,TAPI-2の標的因子であるAD4M17に着目して研究を行った.その結果,TAPI-2が排卵過程に発現が上昇し,その遺伝子発現のノックダウンにより,標的細胞のERK1/2系の活性化が抑制され,これはEGFの添加により解除された.これらの結果から,ADM17により修飾されて初めてEGF like factorは活性化することが初めて明らかとなった. 以上の本年度の結果から,新規の体外培養法として,サイトカイン類やEGF like factorの添加条件を検討中であり,来年度はその確立を目指す
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