研究課題
本研究では、腫瘍免疫において重要な機能を担っている樹状細胞(DC)や細胞傷害性T細胞(CTL)の生体内動態を制御しうる基盤テクノロジーを構築し、この"Cell Delivery System"ともいうべきアプローチを導入した新規癌免疫療法の開発を目指す。本年度は、ケモカイン-ケモカインレセプター連関を利用して免疫細胞の体内動態(腫瘍集積性)を改善する方法論の確立とその癌免疫療法における有用性を解析し、以下の成果を得た。(i)広範な種類の腫瘍細胞に極めて効率よく遺伝子導入可能なRGDファイバー改変型アデノウイルスベクターを用いて、マウス皮内に生着させたMeth-A腫瘍(7-9mm)にケモカイン(CCL27)とサイトカイン(IL-12)の遺伝子を共導入したところ、各遺伝子を単独で導入した群と比較して強力な腫瘍退縮効果が発揮された。また、この抗腫瘍効果の増強が、CCL27によるCD8陽性CTLの腫瘍内動員と、IL-12によるこれら腫瘍内浸潤CTLの活性化が同時に促進された結果であることを明らかとした。(ii)腫瘍特異的なCTLを担癌マウスに移入する癌養子免疫療法モデルにおいて、移入CTLに高発現するケモカインレセプター(CCR7)に特異的なケモカイン(CCL19)の遺伝子を腫瘍組織に導入したところ、腫瘍増殖抑制効果に顕著な改善が認められた。また、CCL17遺伝子導入によって腫瘍組織に集積する移入CTL数が約2倍に増加することを明らかとした。これらの成果により、ケモカイン-ケモカインレセプター連関の応用が、生体内に存在する免疫細胞あるいは生体に細胞医薬として投与する免疫細胞の体内動態制御(Cell Delivery System)に有用であることを実証できた。
すべて 2006 その他
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Cancer Gene Therapy 13(4)
ページ: 393-405
Gene Therapy (in press)