前年度までの研究結果より、0-フコース転移酵素1が連続した多数のEGFドメインの分泌に必須な役割を果たすことが明らかになった。そこで、本年度は、0-フコース転移酵素1が、EGFリピートのフォールディングにおける役割を分子レベルで検討するためのモデル分子として、FLAGタグを付加したEGFリピートのコンストラクト(EGF : FLAG、並びにEGF : FLAG-TM)を作製した。今後、これらのコンストラクトを用いて、0-フコース転移酵素1の発現抑制をした際の構造の変化を、ネイティブPAGEの手法などを用いて、解析する必要があると考えられた。また、実際に、生体内でも同様な構造異常が生じるかどうかを検討するために、0-フコース転移酵素1の変異体を利用して、内在性のNotch受容体の構造の変化の有無を調べる実験についても今後取り組む必要があると考えられた。 一方、EGFドメインを修飾する0-結合型糖鎖修飾として、0-フコースや0-グルコースが知られていたが、本研究課題を遂行する中で、これら既存の糖鎖修飾とは異なる、新規の0-結合型糖鎖修飾が存在することを示唆するデータが得られた。この新規の翻訳後修飾は分子量203であることから、0-GlcNAcもしくは0-GalNAc修飾であることが明らかになった。今後、この新規翻訳後修飾の同定に向けた生化学的な解析や、生物学的役割の解明に向けた取り組みが重要となると考えられた。
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