研究概要 |
本研究により、我々はP-TEFbの宿主阻害因子であるHEXIM1が培養細胞においてHIV-1の複製にどのような影響を与えるのかを検討した。HEXIM1発現により細胞増殖、形態、ウイルスレセプターの発現にはほとんど影響を与えなかった。コントロール細胞と比較してHEXIM1を恒常的に発現した4種類のヒトT細胞のすべてでHIV-1複製が抑制された。同様の現象はHeLa-CD4細胞でも観察された。SIV複製もHEXIM1によって抑制された。これらが転写レベルによる抑制であることをRT-PCRなど一連の実験にて証明した。この実験結果は、TatのCyclinT1利用効率がHEXIM1発現により選択的に負に影響をうけることを示唆する。HIV-1の複製はP-TEFbの機能に強く依存することから、HEXIM1の機能増強または発現増強がエイズ治療の分子標的であることを実証した(Shimizu et al., AIDS, 2007)。 我々はCXCR4のC末端細胞質ドメインにSDF-1α非依存的elldocytosisを起こすSESモチーフを同定したが、これがSDF-1α依存的endocytosisを起こすシグナルモチーフとは異なることが判明した(Futahashi et al., Cancer Sci, 2007)。両者のプロセスの分子機序について詳細を比較したところ、後者に必要と考えられるbeta-arrestinは前者に影響を与えないことが判明した。 HIV-1感染がArp2/3複合体を活性化機構を検索するため、dominant-negative WASP, WAVE, cortactin変異体を発現させた細胞におけるHIV-1感染効率を検索したが、全てHIV-1感染は抑制しなかったことから、HIV-1は感染に際し新規メカニズムでArp2/3複合体を活性化することが示唆された。
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