本研究では、免疫抑制薬の体内動態や効果・副作用発現に関わる分子群の臨床薬理学的研究を進め、カルシニューリン阻害薬タクロリムスとステロイド薬の併用による薬物感受性の変動機序解明を目的として以下の検討を行った。 1.免疫抑制薬の動態制御関連因子並びに感受性関連因子の抽出:生体肝移植時の手術検体(小腸、肝臓、末梢血)や、術後の末梢血検体を対象に、遺伝子発現解析、多型解析及びタンパク質発現解析を包括的に行う。組織中、末梢血中のmRNA発現量、遺伝子多型情報とタクロリムスやステロイド薬の白血球中の濃度推移とを比較し、効果・副作用発現を予測/説明しうる重要因子の同定を行った。その結果、術時の小腸MDR1 mRNA発現量は、術後の拒絶反応予測マーカーとして重要なこと、この遺伝子情報に基づくタクロリムスの初期用量設定法は、有意に拒絶反応発現頻度を低下させることが判明した。また、患者の術後経過と薬効関連因子群の遺伝子情報とを照らし合わせ、重要因子集合体(パスウェイ)の構築を進めている。 2.動態関連因子並びに感受性関連因子を同時に組み込んだイン・ビトロ機能解析系の構築:グルココルチコイド受容体GR、FK506結合タンパク質FKBP4またはFKBP5のcDNAを用いて、HEK293細胞を宿主とした遺伝子発現速度解析系の構築を行った。 3.FK506結合タンパク質12(FKBP1A)を大量精製し、タクロリムスの有無でプロテインアレイ解析を行った。その結果、新しい相互作用タンパタ質の発見に繋がった。 得られた結果を基に、次年度以降研究計画を進め早期目標達成を目指す。
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