研究概要 |
平成18年度に行った解析から,HZFタンパク質が脂肪細胞分化に伴って誘導されること,HZFノックダウン細胞では脂肪分化が効率よく行われないこと,C/EBPαmRNAに結合して翻訳を制御することを見出した。平成19年度の当該研究では,HZFによるC/EBPαmRNA翻訳についての細胞分子生物学的な更なる解析とノックアウトマウスを用いたHZFの生理学的役割の解析を行うことを目的とした。HZFノックダウン細胞におけるmRNA翻訳制御は,脂肪細胞分化に必要とされる主要な転写因子のうち,C/EBPαに特異的であることを確認した。またHZFはC/EBPαmRNAもしくはタンパク質安定性制御には関与せず,mRNA翻訳のみを特異的に制御することが確認された。これまでに行ったHZFによるC/EBPαmRNA翻訳制御を示すより直接的な証拠として,通常ポリソーム画分に存在するC/EBPαmRNAが,HZF非存在下では非ポリソーム画分へとシフトすることを見出した。さらに,平成19年度には試験に十分なHZFノックアウトマウスを繁殖させることに成功した。ノックダウン細胞同様に,HZFノックアウトマウス胎児繊維芽細胞は,培養系において脂肪細胞への分可能に欠陥が見られた。しかしながらHZFノックアウトマウスはC/EBPαタンパク質の量が減少していたにもかかわらず脂肪組織は形態的(量的に)に野生型との差は認められなかった。しかしながらHZFノックアウトマウスは明らかにインシュリンに対する抵抗性を持っていた。これらのことからHZFは生体内で脂肪組織の形態を作るのには必ずしも必要な因子ではないが,脂肪組織の機能,特にインシュリンを介した糖代謝が正常に行われるのに重要な役割を果たしている可能性が示唆された。現在これらの実験結果をまとめた論文を投稿中である。
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