研究概要 |
1) 遊離脂肪酸の産生調節に関する検討 : 昨年度、3T3-L1脂肪細胞の長期間培養系を用いて、脂肪細胞の肥大化過程で代表的なケモカインMCP-1産生が亢進する分子機構を明らかにした(J. Biol. Chem 282 : 25445-25452, 2007)。本年度は、細胞遊走を遊走速度と方向性に分けて解析することが可能なリアルタイム細胞動体測定装置TAXIScanを用いて、脂肪組織由来液性因子に対する細胞遊走能を検討した。骨髄細胞におけるMCP-1受容体CCR2が、MCP-1を含む脂肪組織由来液性因子に対する細胞遊走の方向決定において重要であることが明らかになり、肥満の脂肪組織へのマクロファージ浸潤において骨髄細胞のCCR2を介した細胞遊走の質的変化が関与する可能性が示唆された(J. Biol. Chem. 283 : 35715-35723, 2008)。 2) 遊離脂肪酸の機能的意義に関する検討 : 最近の大規模臨床研究により、代表的なn-3多価不飽和脂肪酸(n-3PUFAs)であるEPAは、脂質代謝改善作用と独立して心血管イベント抑制作用を示すことが知られている。本年度、NEMOes法とFlow assay法を用いて、EPAによる血管内皮細胞への単球接着抑制作用を個体レベルと細胞レベルで明らかにした(Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 28 : 2173-2179, 2008)。昨年度報告したEPAによるアディポネクチン産生増加作用(Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 27 : 1918-1925, 2007)と併せて、n-3PUFAsによる心血管イベント抑制作用の分子機構として重要と考えられる。
|