AMP-activated protein kinase (AMPK)は、エネルギー代謝調節に関わる重要な因子である。その活性化はレプチン等の代謝調節因子によって引き起こされ、肥満・糖尿病治療薬開発新規標的分子として注目されている。また我々は、レプチンがマウス骨格筋においてAMPKを活性化し脂肪代謝を調節していることを既に報告している。そこで平成18年度では、骨格筋におけるレプチン依存性AMPK活性化機構および脂肪代謝調節機構に注目し骨格筋培養細胞であるC2C12を用いた研究を行った。本研究結果を以下に要約する。1)レプチンは二相性にAMPKを活性化する。2)レプチンによるAMPK活性化は、ATM(第一相)およびcalmodulin-dependent protein kinase kinase (CaMKK)(第二相)に依存していた。3)CaMKKの発現は、転写因子Nur77を介したレプチン刺激で誘導される。4)レプチンによる脂肪酸酸化は、α2AMPKに依存する。5)第一相活性においてα2AMPKはβ2AMPKと結合し、核内へ移行。PPARαの転写を促進する。6)レプチンによりβ1AMPKの発現が誘導される。7)第二相活性において、β1AMPKと結合したα2AMPKは細胞質に滞留しacetyl coA carboxylaseをリン酸化し脂肪酸酸化を促進する。 このようにレプチンは、α2AMPKの活性を制御するだけでなく、その細胞内局在を巧みに制御し脂肪代謝(脂肪酸酸化)を調節していることが明らかとなった。今回明らかにした脂肪代謝調節機構は、新しい知見である。本研究成果を、第4回AMPK国際ミーティングで報告し、その一部を雑誌論文(Molecular and Cellular Biology:印刷中)に報告した(次項研究発表に記載)。
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