(1)骨芽和胞性ニッチ構成細胞の同定とその機構解析 マウス骨組織から酵素処理により血球・血管内皮以外の付着吐細胞を分離し、幹細胞マーカーのSca-1、PDGFR2の発現を検討したところ、DFGF2^+Scal-1-1^+PDGF2^-Sca-1^-、およびPDGFR2^+Sca-1^-の3つの細胞集団が得られ、それぞれ開葉系前駆細胞、骨芽細胞前駆細胞・その他、成熟骨芽細胞を含む分画であることがわかった。さらに、マイクロアレイ解析により、各細胞集団特異的に発現する分子の解析を行い、開葉系前駆細胞はサイトカインの発現が高く、これらのサイトカイン等を介して造血幹細胞の制御に関わっているのに対し、成熟骨芽細胞はN-cadherinなどの細胞接着分子を高発現していることがわかった。この結果から、骨芽細胞ニッチでは多様な細胞が役割分担を持って、ニッチ複合体を形成し、幹細胞を制御することを示唆するもので、造血幹細胞の内骨膜領域におけるニッチ制御機構の特徴と考えられた。 2)造血幹細胞-ニッチ相互作用の維持における酸化ストレス制御の役割 マウスに抗がん剤5-FUを投与し、骨髄抑制ストレスを加えた際の造血幹細胞におけるN-cadherinの発現と細胞周期の関連について解析を行った。その結果、5-FU投与により、造血幹細胞内に一過性に活性酸素(ROS)が蓄積し、これにより造血幹細胞のN-cadherinの発現が抑制された。また、N-cadherinの発現抑制により、幹細胞とニッチの接着が抑制され、造血幹細胞がSP分画からnon-SP分画へ移行したことから、細胞周期が静止状態から活性化状態に変化したことが明らかとなった。これらの結果から、骨芽細胞性ニッチにおいて酸化ストレスを抑制することが、造血幹細胞-ニッチの相互作用を維持する上で重要であることがわかった。
|