ヒト死後脳からのゲノムDNAは、通常サンプルのDNAに比べて純度が悪く、ゲノム解析に適していないことが多い。米国スタンレー財団より供与されていたゲノムDNAは、各種網羅的ゲノム解析に不適なことが本研究の過程で判明し、新たにゲノムDNA抽出条件を検討後、ヒト凍結死後脳約160サンプルから高純度ゲノムDNAの抽出を行い実験に供した。現在、DNAメチル化状態の有無によって切断可否が変わる制限酵素でゲノムDNAを処理後、Affymetrix社製ヒトプロモータータイリングアレイを用いて、プロモーター領域のDNAメチル化パターンのprofile取得を順次行っている。また、先行して得られたアレイデータに関して、DNAメチル化候補領域のDNAメチル化状態を実際にpyrosequencing法を用いて定量を行い、false positive/negative rateの推定と、アレイデータのnormalizationや最適なthreshold条件設定などの検討を行っている。また、ヒト死後脳は神経細胞やグリア細胞といった多様な細胞の混合物であり、それぞれ独自のDNAメチル化パターンを持っていることが想定されている。そこで、セルソーターを用いヒト凍結脳試料を神経細胞核群と非神経細胞核群に分離し、それぞれ独自にDNAメチル化状態を取得する、という試みも行っている。現在、神経細胞核群、非神経細胞核群共に、タイリングアレイ解析に充分な量のゲノムDNAを取得できる条件が決定できている。また、並行して、既に取得済みである遺伝子発現解析データの整備を行い、様々な交絡因子の影響を評価している。
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