研究概要 |
本研究の目的は、遺伝子発現マイクロアレイを用いたゲノム網羅的スクリーニングにより、膵癌における新たなメチレーションターゲットを同定し、このうち早期診断あるいは新たな治療法開発の標的として有用な遺伝子を特定し、その臨床的意義を検討するものである。 これまでにマイクロアレイによる膵癌メチル化遺伝子のスクリーニングをおこない、癌の浸潤転移に関わる遺伝子であるReelinなど多数の新規メチル化ターゲットを同定している (SatoN, et.al., Gastroenterology 2006) 。このうち、我々が過去に同定したメチル化遺伝子SPARCは、膵癌細胞ではメチル化して発現が低下している。SPARCの発現低下に伴い、膵癌の悪性度が増加することを実験的に確認し、現在投稿中である。一方でSPARGは膵癌周囲の間質細胞では高発現しており、さらにSPARCの高発現は膵癌患者の強力な予後因子となることを発見した (Infante JR, et al., JGIinOncol 2007) 。これはmRNAレベルでの発現でも予後因子となりうることを改めて確認し、近日報告の予定である。このことは微量検体からの予後予測の一助となると思われる。 さらに、DNAメチル化異常が膵発癌のどの段階でおこるかを調べるため、膵癌の前駆病変とされるPanlNにおけるメチル化を詳細に調べたところ、マーカーによってメチル化の頻度に差がみられるものの、比較的早期の病変 (すなわちPanIN-1) からメチル化を認め、PanINの進展に伴いメチル化の程度が増加していた(SatoN, et al., Mod Pathol 2008)。さらに、PanINの進展とSARP2/SRFP1の異常メチル化に関して研究を続けており報告予定である。今後はこれらの結果をもとに膵液におけるメチル化異常を検出する方針である。
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