研究概要 |
癌細胞の免疫監視機構からのエスケープメカニズムとしてHLA class I分子の発現欠失が知られており、欠失したHLA class I分子には免疫原性の強い抗原が提示されている可能性が考えられる。当科で樹立した肺癌細胞株においても、22株中8株(36%)にHLA haplotype lossを認めている。今回、日本人に多いHLA-A24,B52,Cw 12を欠失した肺癌細胞において、欠失したそれぞれのHLAを再構築し、その細胞性免疫応答について比較解析した。 肺腺癌患者G821(HLA-A24/A26,B52/51,Cw12114)より樹立した肺癌細胞株G821L(HLA-A26,B51,Cw14)はHLA class I分子のhaplotype lossを有していた。欠失したHLA-A24,B52,Cw 12を自己B細胞よりcloningし、自己腫瘍細胞株G821Lに移入し、それぞれのHLA移入株を樹立した。自己所属リンパ節リンパ球より調整したCD8+T細胞を、それぞれのHLA移入株を用いて刺激培養したところ、いずれのHLA移入株においてもHLA移入株をG821Lより認識するCTLを誘導可能であった。そのprecusor CTL frequencyは、A24,B52,Cw 12移入株それぞれに対して1/5x10^5,1/1.5x10^,1/6 x 10^5であった。 G821Lに対するfrequency 1/4 x 10^5と比較し、 HLA-B52移入株に対するprecursor CTL frequencyがやや高い傾向を認めた。 HLA haplotype lossを伴う肺癌症例において、欠失したHLAに提示される抗原を認識するCTLが存在した。現在、これらのHLA移入株特異的CTLをcloIling中である。樹立したCTL cloneをプローブとして、cDNA expression cloning法(G821L tumor由来 1.5 x 10^5 cDNA library)を用いて、腫瘍抗原の同定を行っていく予定である。
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