平成18年度は、マイクロベッセル観察システムを用いてラット頸髄内の微小血管を観察し、アセチルコリンによる血管弛緩反応のメカニズムを薬理学的に検討した。 1)ハロセン麻酔下にウィスターラットを開胸し、左心室から人工脳脊髄液を潅流させながら右心房を切開脱血し、迅速に頚部脊髄を摘出した。4℃人工脳脊髄液中でビブラトームを用いて厚さ約125μmの脊髄スライス標本を作成した。この標本を酸素93%+炭酸ガス7%で通気した37℃人工脳脊髄液で満たした観察用チャンバーに入れ、倒立顕微鏡にて脊髄実質内の微小血管を観察した。血管平滑筋が壁在する内径3-10μmの微小血管を観察した。これらの血管はその径から毛細血管直前の抵抗血管であることが推測された。顕微鏡画像はビデオカメラで取り込み、デジタル変換した後コンピュータ画面上で解析ソフトを用いて血管径を計測した。 2)酸素93%+炭酸ガス7%(PCO_2=40mmHg)にて30分間通気した脊髄スライス標本にプロスタグランディンF_<2α>を加え、標本内動脈を収縮させた。その後、アセチルコリン(0.1-10μM)を灌流液に追加した。アセチルコリンは濃度依存性に脊髄内微小血管を拡張させることが分かった。また、一酸化窒素合成阻害薬である1-NAME処置下では、アセチルコリンによる血管拡張反応はみられらなかった。以上の結果から、我々が以前報告した大脳実質内微小血管と同様、脊髄でも一酸化窒素合成酵素を介する血管拡張反応が確認できた。現在、一酸化窒素合成酵素遺伝子ノックアウトマウスを用い、脊髄血管の拡張反応を検討中である。
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