マイクロベッセル観察システムを用いてラット頸髄内の微小血管を観察し、平成19年度に行った薬理学的検討内容を、前脊髄動脈潅流域とそれ以外の部位あるいは脊髄分節毎に分けて行った。またこれら結果をもとに、各種遺伝子ノックアウトマウスおよびトランジェニックマウスの脊髄実質内血管について検討を行った。 まず、これらマウスの脊髄標本で、低酸素および高炭酸による脊髄血管拡張反応が、K+チャネル拮抗薬、一酸化窒素合成酵素阻害薬、可溶性グアニレートシクレース阻害薬、NMDA受容体拮抗薬および各種・リーラジカルスカベンジャーで影響を受けるか否かを検討した。これら病的状態が及ぼす脊髄微小血管の反応性の変化には分節問および同分節内に部位差があり、その相違が一酸化窒素およびK+チャネル活性の程度の違いを反映したものであることを一部確認した。次に、各種麻酔薬自体が脊髄微小血管に及ぼす作用を観察した。その作用機序に、K+チャネル、一酸化窒素、NMDA受容体あるいはフリーラジカルが関与するか否かを検討し、実験結果の解析を進めている。ついで、麻酔薬の低酸素あるいは高炭酸ガスによる脊髄血管拡張反応に及ぼす作用を検討し、その作用が、各種K+チャネル拮抗薬、一酸化窒素合成酵素阻害薬、可溶性グアニレートシクレース阻害薬、NMDA受容体拮抗薬および各種フリーラジカルスカベンジャー処置で抑制されるか否かを検討した。一部の麻酔薬では、病的状態における脊髄の潅流低下を改善させることを確認したが、これらがフリーラジカルや興奮性アミノ酸、一酸化窒素およびK^+チャネルを介した反応であるかどうかを明確に確認するまでには至っていない。
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