研究課題
前年度に引き続き、ovl変異体に認められる、光感受性の視細胞死のシグナルについて検討を行った。このシグナルはフォトトランスダクション系に入り、トランスデューシンの位置で視細胞死のシグナルと同期することが判明したため、この下流に存在すると考えられる分子を、通常はこの分子が発現していない視細胞外節に強制的に発現させるトラスジェニック体を作製したところ、やはり視細胞死を引き起こした。また、このシグナル分子の阻害剤はovl視細胞死を抑制し、促進剤は視細胞死を促進した。これらの結果より、この視細胞死は異所性に開始されたフォトトランスダクションが他のシグナル経路とミスマッチを引き起こすことによって視細胞死を引き起こすことが強く示唆された。また、上記の実験でも使用した視細胞強制発現系であるが、臭細胞特異的遺伝子ompの下流にEGFPをつけた発現カセットをタンデムに挿入することにより、トランスジェニック体を鼻の蛍光の有無で単離できるようになった。この系を用いてヒトロドプシンQ344X変異体を作製したが、変異ロドプシンの発現をRTPCRで確認でき、さらに、この変異体は発生後4日目から視細胞杆体の数が激減しており、人の網膜色素変性の表現型を上手くコピーてできていると考えられた。この発現系を用いて、すでにロドプシンP23H(欧米で最も多い変異、Q344Xと表現型が異なる)のトランスジェニックラインを得ており、その他、日本人に見られるロドプシン変異の発現コンストラクトを受精卵かインジェクションしている。この系を用いることによって優性の色素変性の多くを模倣することができると考えており、これらの病態解明、治療法開発にきわめて重要なツールであると考えている。
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