ヘパラン硫酸と生理活性物質との相互作用を解析し、糖鎖を介した生理活性物質の機能制御による新たな疾患治療を展開する目的として、生理活性物質と親和性の高い糖鎖であるヘパラン硫酸に注目し、研究をおこなった。第1に、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、血管新生緑内障の治療に重要である血管新生を抑制する薬剤としての役割を検討するために、高濃度酸素負荷による虚血網膜血管新生マウスモデルを作成し、ヘパラン硫酸の類似体であるヘパリンをマウスの腹腔内に連続投与し、網膜血管形成と血管新生を評価したところ、ヘパリンが投与された個体では、著しく網膜血管形成及び血管新生が抑制された。また、ヘパリン投与個体では、線維芽細胞成長因子の受容体のリン酸化が掬制されていた。このことから、ヘパリン投与により、線維芽細胞増殖因子受容体を介した網膜血管形成が抑制されていると考え、現在さらに解析中である。第2に、発達緑内障の隅角発生異常に関連する分子群を修飾する因子として、ヘパラン硫酸の役割を解析するために、隅角線維柱帯組織を構成する神経堤細胞特異的にヘパラン硫酸合成に必須の酵素EXT1をコンディショナルにノックアウトさせた遺伝子改変マウスを作成した。そのマウスでは、角膜菲薄化、隅角形成異常、虹彩欠損を認め、Peters奇形に酷似した表現型を呈した。現在、神経堤細胞の分化に関連する生理活性物質とヘパラン硫酸との相互分子メカニズムについて、解析をおこなっている。
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