本研究は、単に単一の遺伝子を云々するものではなく、HDAC familyとその関連遺伝子群に関して、転写調節遺伝子群として一つの機能を果たす多数の遺伝子familyの動向を総合的に口腔癌で明らかにし、実際に役立つ分子腫瘍マーカーや分子標的治療法の開発に応用することを目的とする。 口腔癌、正常組織に関してAffymetrix社製GeneChipを使用して、HDAC familyの発現状態を明らかにしたところ、特に、HDAC familyのサブタイプであるHDAC6の発減現変動が非常に大きいことが明らかになった。HDAC6遺伝子はαチュブリンを脱アセチル化し、細胞の運動性を増加するため、癌の転移や浸潤への関与している可能性があり、また、それらの腫瘍特性の分子マーカーとしても期待できる。そこで、HDAC6遺伝子発現状態をmRNAレベルとタンパクレベルで調べるため、多くの臨床サンプルを用いてreal time PCR、Western blotting法、免疫染色法を行った。その結果、HDAC6遺伝子発現亢進が確認できた。具体的にはmRNAレベルで74%、タンパクレベルで51%にHDAC6遺伝子発現亢進が検出された。この結果と腫瘍の臨床諸指標とを比較検討したところ、stage I、II群とstage III、IV群間に有意な相違があり、HDAC6遺伝子は腫瘍の進展と関連があることが判明した。 今後、同様の検索をマイクロアレイ・データーを基に行い、他のHDAC family遺伝子が群としてどのように発現変動しているのかを明らかにし、さらに、腫瘍の臨床諸指標との関連を検討する予定である。
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